神戸を中心に訪日外国人のお客様を案内するツアーガイドとして活動する井上夏子氏。英会話講師として、培ってきた経験を活かしながら、神戸や大阪をはじめ、京都・奈良など関西各地の魅力を国内外のお客様へ伝えています。 2025年度の訪日外国人数は約4,268万人を超え過去最多を記録し、大きな経済効果も。
そんなインバウンド業界の最前線で活躍している井上氏。ガイドとして大切にしているのは、決められた情報を一方的に伝えるのではなく、目の前のお客様の興味や気持ちに寄り添い、その方にとって心に残る時間を作ること。ホスピタリティ研修の受講を通じて、自身が感覚的に実践してきたおもてなしを改めて見つめ直し、声や表情、相手の言葉に耳を傾けることの大切さを再認識された。井上氏に、ツアーガイドをはじめたきっかけやお客様との印象的なエピソード、ガイドとして大切にしている思いについてお話を伺いました。

(取材:橋本 峻)
(株)エム・サマーコネクト 代表取締役 井上氏 インタビュー
◼️現在のお仕事について教えてください。
神戸を中心に、訪日外国人のお客様を案内する
ツアーガイドとして活動しています。
ガイドを始めて約 2 年半になります。
神戸のほか、大阪城や道頓堀などの
大阪エリアをご案内しています。
また、旅行会社様からの依頼を受け、
バスツアーのガイドとして
奈良や京都をご案内することもあります。
現在も幼稚園児を対象とした
英会話講師の仕事を続けながら、
ツアーガイドとして活動しています。

◼ツアーガイドを始めたきっかけを教えてください。
英会話講師の仕事はとても楽しく、
今も大好きな仕事です。
一方で、自分の英語力をさらに高め、
もう一段階上のフィールドに挑戦したい
という思いがありました。
新しい仕事を探していたとき、
インバウンド向けのツアーガイドという
仕事を知り、
「自分も挑戦してみたい」
と思ったことがきっかけです。
ツアーガイドになる方法を自分で調べ、
実際に活動している方から応募方法や面接、
ツアーのつくり方などを教えていただきました。
その後、ガイドのプラットフォームに応募し、
面接を受け、自分のツアーページを
イチから作成しました。
何もない状態から一つずつ形にしていく
過程がとても楽しく、
自分が一歩ずつ前へ進んでいること
を実感できました。
また、多くの方とのご縁に恵まれたことも、
ガイドとして活動を始められた
大きな理由だと思っています。
◼ツアーガイドの仕事で、どのようなときに喜びを感じますか?
お客様の笑顔を見たり、
一緒に楽しかった出来事を振り返ったり
する時間に、大きな喜びを感じます。
ツアーの終わりに
「夏子に出会えて良かった」
「夏子がガイドで良かった」
と言っていただけると、
本当に嬉しいですね。
旅行中のお忙しい時間を使って、
丁寧なレビューを書いてくださることもあり、
一文ずつ大切に読んでいます。
◼特に心に残っているお客様とのエピソードはありますか?
ご家族で参加された、
少しおとなしい雰囲気のお客様が
印象に残っています。
ご家族の中にとても人見知りの
お子さんがいらっしゃいました。
ご家族の皆様はアメリカからお越しだったのですが、
ツアー中、そのお子さんと話したり、
一緒に「くまのプーさん」の歌を歌ったりしながら
楽しく過ごしました。
私としては、いつも子どもたちに接するときと
同じように、自然に関わっていたつもりでした。
後日いただいたレビューには、
「娘はとても人見知りで、
初対面の人と話すことはほとんどない。
それなのに、一緒に歌を歌う姿を見られたことが、
家族にとって奇跡のような時間だった」
と書かれていました。
私にとっては自然な行動でしたが、
その時間がお客様の心に深く残り、
お子さんの成長を感じる機会に
なったことを知り、
とても驚くと同時に嬉しく思いました。

(お客様よりいただいた口コミ投稿。左は原本。右は日本語訳版)
◼海外のお客様は、日本のどのようなところに魅力を感じているとおもいますか?
多くのお客様が最初に驚かれるのは、
街の美しさです。
「なぜ道にゴミが落ちていないのですか」
と、よく聞かれます。
また、日本人の丁寧な対応や
親切さも高く評価されています。
お店での接客だけでなく、電車やエレベーターを
待つときに、きちんと順番に並ぶ姿にも驚かれます。
私たちが普段、無意識に行っていることが、
海外の方にとっては日本の魅力として
映っているのだと気づかされます。
◼研修を受ける前、「おもてなし」や「ホスピタリティ」にどのようなイメージを持っていましたか?
ホスピタリティとは、
「人のために行動すること」
というイメージを持っていました。
以前から周囲の方に
「ホスピタリティがある」
と言っていただくことがあり、
その言葉には興味を持っていました。
自分が普段、感覚的に行っていることを
改めて詳しく学びたいと思っていました。
◼研修を受講しようと思った理由を教えてください。
もともとホスピタリティについて
詳しく学びたいという思いがあり、
講座があると知って、
ぜひ受講したいと思いました。
ホスピタリティは、
あるかないかを目で見て判断することが
難しいものです。
だからこそ、研修を受講し、
専門的に学んだことを認定という形で
示せる点にも魅力を感じました。
自分が大切にしてきた考え方や行動を、
客観的に認めていただけることは、
とても嬉しいことだと思い、
受講を決めました。
◼研修で特に印象に残ったことは何ですか?
特に印象に残っているのは、
魚釣りを例にしたお話です。
お腹を空かせている人に魚を与えるだけでなく、
その人に寄り添い、一緒に魚を釣る方法を考える。
そのお話から、
相手が本当に必要としていることを理解し、
長い目で支えることの大切さを学びました。
この考え方は、お客様への対応だけでなく、
家族や友人など、さまざまな人との関係にも
生かせると思います。
人と関わる際の基本となる考え方として、
強く心に残っています。

◼研修後、考え方や行動に変化はありましたか?
以前よりも、お客様の言葉に耳を傾け、
「この方は本当は何を伝えたいのだろう」
と考えるようになりました。
まずは自分の意見を横に置き、
相手の思いや希望を理解することを意識しています。
また、笑顔や表情など、
言葉以外の部分も大切にするようになりました。
そして、声について学んだことで、
優しく穏やかに、相手が
「一緒にいて居心地が良い」
と感じられるような話し方を心がけたい。
と思うようになりました。

◼お客様をご案内する際、大切にしていることは何ですか?
第一印象を大切にしています。
笑顔で目を合わせ、
相手が安心できる話し方をすることを
心がけています。
また、私が伝えたい内容よりも、
お客様が何に興味を持っているかを優先しています。
例えば、私がお寺や神社の歴史について
説明したいと思っていても、
お客様が別のことに興味を示していれば、そ
の話題を広げるようにしています。
暑そうにされていれば、その気持ちに寄り添い、
休憩や予定の変更も考えます。
あらかじめ決めた内容を一方的に
伝えるのではなく、目の前のお客様の
気持ちや状態に合わせる
ことが大切だと思っています。
◼思いやりや感謝の気持ちを保つために、日頃から心がけていることはありますか?
私は日頃から、「今日の幸せ」を
見つけることが好きなのだと思います。
子どもが楽しそうに学校生活を送っていることや、
成長した姿を見られたこと、
ゆっくりコーヒーを飲めることなど、
日常の中にある小さな幸せを見つけています。
そして、その幸せは家族や周囲の人のおかげで
生まれているのだと気づくと、
自然に
「ありがとう」
という気持ちが湧いてきます。
日頃から幸せを見つけていると、
「自分も誰かに、幸せだな、ありがたいなと
思ってもらえる行動をしたい」
と自然に考えるようになります。
それが、私のホスピタリティに
つながっているのかもしれません。
◼これからガイド目指したい!という方やホスピタリティを学ぶ方へ、アドバイスをお願いします。
一番大切なのは、笑顔だと思います。
言葉にしなくても、笑顔には
「あなたに会いたかった」
「来てくれてありがとう」
という気持ちを伝える力があります。
表情は、話す内容よりも先に相手へ届きます。
心からお客様を歓迎する気持ちがあれば、
自然と表情にも表れるのではないでしょうか。
お客様と出会えたことへの喜びや
感謝が伝わるような笑顔を、
ぜひ大切にしていただきたいです。
