新人スタッフが辞める会社に足りないもの

〜生成AIには相談できても、上司には相談できない?〜


採用しても人財が育たない。続かない。

その原因は、本当に新人社員・スタッフだけにあるのでしょうか。

「せっかく採用したのに、なかなか人が育たない」

「仕事を教えても、すぐに辞めてしまう」

「最近の若手社員は、何を考えているのか分からない」

経営者の方々や管理職の方から、

このような声を聞くことがあります。

人財不足が続くなか、採用活動には多くの

時間と費用がかかります。

求人を出し、面接を行い、入社後には仕事を教える。

それにもかかわらず、思うように人財が育たず、

短期間で退職してしまう。

そうなると、現場に残った従業員の負担が

さらに増え、職場全体が疲弊していきます。

もちろん、入社した本人の姿勢や仕事に対する考え方に

課題がある場合もあります。

しかし、

「最近の若者は我慢が足りない」

「主体性がない」

と相手側だけに原因を求めてしまうと、

職場にある本当の課題を見落としてしまうかもしれません。

本当の課題はなんなのでしょうか・・・。


新人さんが相談しないのではなく、相談できないのかもしれない

人財が育たないとき、私たちはつい、

本人の意欲や能力に目を向けます。

「分からないなら聞けばいい」

「もっと自分から動いてほしい」

「何度も同じことを言わせないでほしい」

上司や管理職からすれば、当然その様に思うかもしれません。

しかし、新人スタッフの側から見ると、

相談したくても相談できない状況が

生まれていることがあります。

質問をしたとき、面倒そうな表情をされた。

失敗を報告したとき、事情を聞かれる前に叱られた。

自分の意見を伝えたとき、「前からこのやり方だから」と否定される。

上司がいつも忙しそうで、声をかけるタイミングが分からない。

話しかけると、ため息まじりに話される。

こうした経験が積み重なると、新人スタッフは

少しずつ相談することを諦めていきます。

相談しないのではないのです。

「相談しても大丈夫だ」と思える関係性が、

まだつくられていないのかもしれません。


相談相手が、上司ではなく生成AIになる時代

現在では、ChatGPTGeminiなどの生成AIを、

仕事の相談相手として活用する人も増えています。

分からないことを調べる。

文章の書き方を相談する。

仕事上の悩みを壁打ちしてみる。

人間関係について、自分の気持ちを言葉にしてみる。

生成AIは、時間を気にせず相談できます。

また、

「こんなことを聞いたら迷惑かもしれない」

「こんな初歩的な質問をしたら評価が下がるかもしれない」

「相談したら、他の人にもその話が広がるかもしれない」

と遠慮する必要もありません。

同じことを何度質問しても、嫌な顔をされることもありません。

新人社員が上司よりも生成AIに相談する

ようになったとすれば、

それは単に

AIの機能が優れているからだけではないのではないでしょうか。

職場の人には相談しにくい。

否定されたくない。

忙しい相手に迷惑をかけたくない。

自分の考えをうまく言葉にできない。

そのような心理が背景にある可能性があります。

生成AIへの相談を否定する必要はないと思っています。

便利なものは積極的に、どの様に活用していくかが、

ポイントだとも思っています。

一方で、組織としては考える必要があるかもしれません。

私たちの職場は、生成AIよりも人に相談したいと思える環境になっているでしょうか。


コミュニケーションとは、言葉の現象である

コミュニケーションとは、一方的に情報を伝えることではありません。

私は、コミュニケーションとは、一つの視点として、

「言葉と言葉の間に生まれる現象」であるとも学ぶ機会がありました。

上司が言葉を発する。

部下がその言葉を受け取る。

そして、部下から返ってきた言葉や反応を、上司が再び受け取る。

その繰り返しのなかで、理解や信頼関係がつくられていきます。

たとえば、上司が部下に「大丈夫?」と尋ねたとします。

部下が「大丈夫です」と答えたとしても

本当に問題がないとは限りません。

心配をかけたくない。

忙しそうだから、これ以上話せない。

弱いと思われたくない。

何から話せばよいか分からない。

そのような気持ちを抱えながら、

「大丈夫です」と答えている可能性もあります。

その言葉をそのまま受け取って会話を終わらせるのか。

それとも、表情や声のトーンを見ながら

「少し元気がないように見えたけれど、本当に大丈夫?」

「今すぐでなくても、お話せるタイミングになったらいつでも声をかけてね。」

「僕(私)も最初はこんなことで困ったから、何かお手伝いできることあればなんでも手伝うよ!」

と、もう一つ言葉を重ねるのか。

この違いが、相談できる職場と、

相談できない職場を分けていきます。

コミュニケーションで大切なのは、

上手に話すことだけではありません。

相手の言葉をどのように受け止め、

次にどのような言葉を返すのか。

その言葉のキャッチボールによって、相手との

関係性は少しずつ変化していきます。

大切なのは、相談を受ける上司、先輩などの管理職側も

一度、立場や自信の評価などを横に置き、

相手の立場や考え方に心を寄せることです。


管理職に求められるのは、すべての答えを持つことではない

上司や管理職は、部下から相談されたときに、

すぐに正しい答えを出さなければならないと思うかもしれません。

相談を受けた内容が、わからないと恥ずかしい。

立場がなくなる・・・。

そうではありません。

管理職の役割は、何でも答えられることではありません。

相手の話を聴き、一緒に考え、必要なフォローにつなげることです。

「どうしてそんなことをしたの?」

と責めるのではなく、

「そのとき、どのような状況だったの?」

と相手に寄り添い聞く。

「もっと主体的に動いて」

と抽象的に伝えるのではなく、

「自分で進められそうなポイントは見つけられそう?」

と一緒に考える。

「失敗しないように気をつけて」

と終わらせるのではなく、

「この辺がややこしいかもしれないから、できたら一度教えてね!」

「何かお手伝いできることあったら声をかけてね!」

と振り返る。

言葉の使い方が変われば、部下の受け止め方も変わります。

部下の受け止め方が変われば、行動も少しずつ変わっていきます。


離職率を下げるために必要な、社内のホスピタリティ

ホスピタリティという言葉を聞くと、

お客様に対する接客やおもてなしを

思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、ホスピタリティはお客様にだけ

向けるものではありません。

共に働く従業員の状況に気づく。

相手の立場や気持ちを想像する。

必要な声かけや支援を考える。

こうした社内での関わりも、立派なホスピタリティです。

私たちは、ホスピタリティを実践するうえで、

「観察」

共感」

提案」

が重要だとお伝えしております。

まず、相手の表情や行動の変化を観察する。

次に、すぐに評価や否定をせず、

その背景にある気持ちを考える。

そして、一方的に指示するだけではなく、

相手に合った支援や選択肢を提案する。

この姿勢が日常のなかに根づけば、

若手社員は、小さな疑問や不安を

早い段階で相談できるようになります。

問題が大きくなる前に共有できれば、

失敗を責めるのではなく、

学びに変えることもできます。

新人社員を大切にすることは、

何でも許すことではありません。

厳しいことを伝えてはいけない!

ということでもありません。

伝えるべきことは伝える。

ただし、人格を否定せず、

相手の成長につながる言葉を選ぶ。

それが、人財育成における

ホスピタリティではないでしょうか。


単発の研修だけでは、職場は変わりにくい

コミュニケーションやホスピタリティの

大切さは、多くの方が理解されていると思います。

研修を受ければ、その場では

「明日から意識しよう」と感じることもあるでしょう。

しかし、忙しい現場に戻ると、

以前と同じ伝え方や関わり方に戻ってしまうことがあります。

それは、意識が低いからではありません。

長年身についた行動や職場の習慣は、

一度学んだだけでは変わりにくいからです。

だからこそ、人財育成には、単発の研修だけではなく、

現場での実践と振り返りを継続する仕組みが必要です。

一般社団法人ホスピタリティCCでは、

研修を実施して終わるのではなく、

職場の状況に合わせて継続的に支援する

「伴走型研修」をご提案しています。

現場の課題や従業員の声を確認する。

上司や管理職の関わり方を振り返る。

実際の職場で取り組む行動を決める。

一定期間実践し、変化や新たな課題を確認する。

そして、次の行動につなげる。

このサイクルを繰り返すことで、

研修で学んだ内容を、日常の言葉や行動へと

落とし込んでいきます。


人財が育つ職場は、相談したくなる職場

さて、長くなってしまいましたが、

採用しても人財が育たない。

長く続かない。

その原因は、必ずしも採用した

相手だけにあるとは限りません。

人は、自分のことを見てもらえていると

感じる場所で育ちます。

失敗や不安を安心して話せる場所に定着します。

自分の言葉を受け止めてもらえる場所で、

少しずつ新しい行動に挑戦できるようになります。

新人社員が上司ではなく

生成AIに相談していることを問題視する前に、

まずは私たち自身が問い直す必要があります。

この職場は、人に相談したくなる

場所になっているだろうか。

コミュニケーションとは、

言葉を一方的に届けることではありません。

言葉を受け取り、言葉を返し、

その間に信頼関係をつくっていくことです。

人財が育ち、長く働き続けられる職場は、

特別な給与や制度だけで完成するものではないのではないでしょうか。

日々交わされる言葉と、

相手を大切にしようとする小さな行動の

積み重ねによって、少しずつつくられていきます。

単発の学びを、一時的な意識で終わらせないために。

こちらの記事を

人財が安心して成長できる職場づくり、

そして離職率低下に向けた取り組みの一助として

お役立ていただけましたら幸いです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

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